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The Legend of Zorro レジェンド・オブ・ゾロ

アメリカ映画 (2005)

アドリアン・アロンソ(Adrián Alonso)がメジャー映画で大活躍するコメディ風アクション大作。アドリアンはコメディ部分の大半と、アクションの一部を担っている。撮影時は10才くらい。小さな体を駆使してのギャグとアクションは気合が入っているし、表情は多様、すごく芸達者な子役だ。たどたどしい英語と、時々使う流暢なスペイン語は、カリフォルニアがメキシコ割譲地だった時代背景にぴったりだ。出番は飛び飛びで、冒頭と、学校での大活劇の後は、40分近く出番がないが、後半、特に最後のクライマックスはアクション・シーンにも参加している。エンドクレジットでは主役2人、それに次ぐ5人の後に「and」で登場し、重要な役柄であることを示している。

映画の舞台背景がどのくらい史実を反映したものかはよく分からない。カリフォルニアが、1850年9月9日にアメリカの31番目の州となったことは確かだが、映画の冒頭で出てくるような住民投票などは行われなかったのではないか。そうすると、映画の最後の調印式もなくなるが、どうせゾロそのものが架空の存在なので歴史との整合性は無視しても構わないのであろう。実際には、アメリカとメキシコの間で国境をめぐる主張の違いから1846年4月に戦争状態となり、旧式の武器しか持たないメキシコ軍は1年未満で敗北、1847年1月にメキシコ領アルタ・カリフォルニアはアメリカ軍の統治下に入った。そして、1848年2月2日のグアダルーペ・イダルゴ条約で1,500万米ドルと引き換えにアメリカに割譲される。この時点でのカリフォルニアの人口は僅か7300人。教会を中心にした小さな町が点在する何もない広大な大地だった。しかし、この条約が批准される僅か9日前、コロマのサッターズミルでジェームズ・ウィルソン・マーシャルが金を発見していた。これを契機に起こったゴールドラッシュでカリフォルニアの人口は急増、スペイン系メキシコ人しかいなかった土地には様々な人種の人々が押し寄せる。これらの人々を管理する機関が何もなかったことから、翌1849年には代表者会議が開催され、奴隷制を違法とすることとした(南北戦争の10年ほど前なので、南部諸州にとっては痛手)。そして、1850年には31番目の州となる。この時点ではもうアメリカの一部になっているので、賛否を問うこと自体無意味なのだ。南軍側が渋い顔をしたことは確かだが、州となる上での問題は何もなかったし、映画の冒頭で投票用紙がスペイン語書かれていたのも、当時の住民は非メキシコ人の方が遥かに多いはずなのでおかしい。因みに、映画の後半に登場するニトログリセリンも、発見されたのは1847年(イタリア)なのでアメリカにあってもおかしくはないが、まだ安全な製造法は見つかっておらず、名前もパイログリセリン、映画ではフランス貴族がヨーロッパから持ち込んでいるので、発音はピログリセリーヌ。ここでも歴史的整合性は見られない。映画の具体については、あらすじに任せよう。

アドリアン・アロンソは、2年後の『La misma luna(同じ月の下で)』の時よりも童顔だし、コメディ的な要素が多いので実に可愛い。アクション大作でコメディというのも珍しい。逆に、それで映画の方向性が2分されてしまい良くないという批判もあるが、アドリアンを観るというスタンスに立てば、様々な面を見られて実に楽しい。


あらすじ

カリフォルニアを独立州とするか否かの投票の日、投票所の設けられた広場は人で一杯だ。学校に行っているべきホアキンは、普段着を着て、露店からリンゴをくすねて食べている。片手には大きなパチンコ。如何にも腕白というイメージだ。その姿が顔見知りのフェリペ神父に見つかり、「学校だと思ったが?」と皮肉られる。「神父様、ゾロが来るかもしれない」と期待一杯のホアキン。「きっと、お尻に“Z”と刻まれちゃうぞ。どうする?」。「ホント?」と、そうして欲しそうなホアキンにあきれ、解放してやる神父。投票が締め切られ、投票箱を軍人が回収した時、銃声が何発も響く。悪漢マックギヴンスの登場だ。神父に、「何の真似だ、マックギヴンス」と訊かれ、「まだ投票してねぇ」と不敵に答える。「悪いが もう遅い。投票は締め切られた」。「そんなぁ 公平じゃねぇ。俺にも権利がある」「その箱 いただけるかな。そしたら、消えてやるぜ」。さらに、「かつて バビロンは神の手で灰にされた。愚かなクソどもが のさばったからだ。この投票に神の鉄槌を下す」と御託を並べる。それを 不審の目で見るホアキン(1枚目の写真)。マックギヴンスが合図すると、予め建物の各所に陣取った仲間が一斉に銃を向ける。マックギヴンスが「神の名において」と銃を構えると、そこに黒い帽子が飛んできて、彼を馬から落とす。帽子を投げたのはゾロ。一番高い建物上にすくっと立っている。手を高く掲げると、群集から喜びの帽子が舞い上がる(2枚目の写真)。飛び降りるゾロ。銃を撃ち始める仲間たち。落馬したマックギヴンスが銃を撃とうとすると、ホアキンがパチンコで一撃を加える(3枚目の写真)。飛ばしたのは、さっき食べたリンゴの芯だ。投票箱を盗んだマックギヴンスは、馬車を駆り、仲間と共に町の外へ向かう。それを1人の力だけで取り戻したゾロの活躍は凄いが、最後の瞬間に覆面が外れ、ピンカートン社の探偵に素顔を見られてしまう。
  
  
  

ゾロは館に戻ると、投票が無事済んだことに妻と2人で仲良く乾杯する。しかし、独立州になるまで3ヶ月間、ゾロとして治安を守ると言い出した夫に対し、妻は不満をぶつける。折角普通の暮らしができると確信していたのに、それが3ヶ月延びたからだ。夫婦喧嘩が終わる頃、ホアキンは、こっそり自分の部屋に入り込む。玄関からは入れないので、木を伝って窓から忍び込んだのだ(1枚目の写真)。父が見に来た時には、狸寝入りでごまかす(2枚目の写真)。
  
  

翌日。母はホアキンを町の学校に送っていく。今日は、ちゃんと制服を着ている。「パパ 朝食にいなかったね」。「言ったでしょ。お仕事で朝が早かったの」。「いつも仕事ばっかり」(1枚目の写真)。「正確には 何してるの?」。「ドンの称号があるのよ。他の皆さんと集まって、土地や投資の話をする。とても大事な お仕事よ」。「て、ことは、友達と座って お金を数えてるんだ」(2枚目の写真)。「ホアキン、お父様を批判するんじゃないの」。ホアキンは、父のことを全然買っていない。ホアキンが学校に行った後、母は、ピンカートン社の探偵に捕まり、夫の正体をバラすと脅される。そして、仕方なく政府の計画に従うことを了承。その結果として、夫の元に弁護士が訪れ、離婚訴訟の文書が渡される。
  
  

3ヶ月後。2人はもう離婚し、ホアキンは母と暮らしている。ある日の学校での一場面。映画の中で最もコミカルな部分だ。神父が先生を務めている。「劣等生」と書かれた紙帽子を被せられた子が、教壇の前の椅子に座らされている。先生が「他にもトイレだと言って、授業を邪魔したい者はいるか?」と全員に注意喚起。一番後ろの列に座ったホアキンだけ、下を向いている。実は、鉛筆を口にくわえて遊んでいたのだ。先生は、黒板に書かれた「Statehood(独立州)」という文字を棒で叩いて、「この単語の意味が分かる者?」と訊く。遊び続けるホアキン。先生が「ホアキン」と指名しても、全然聞いてない。大声で、「ホアキン・デラ・ベガ!」と呼ばれ、何事かと顔を上げる(1枚目の写真)。とぼけた顔が愉快だ。「独立州について、みんなに意見を述べなさい」と促され、「金持による農民の搾取が終わります。不公平な突き棒による僕たちへの厳しい支配が」と答える。最後の部分に引っかかった先生が、「君の説の中で、突き棒は どう関係するんだね?」と訊く。ホアキンは、「それは…」と先生に言うと、横を向いて小声で「先生のお尻」と囁く。それを聞いて笑う生徒たち。先生が棒で机を叩いて「静かに!」と叱る。それでも笑いが止まらない「劣等生」を、「もっと笑わせてやろうか」と叩きに行く先生のお尻目がけて、ホアキンのパチンコが飛ぶ(2枚目の写真)。「ここに 来い。悪魔め」。来ないのを見て、棒を振りかざして駆け寄る先生に対し、同じく棒で応戦するホアキン。教室内で先生とチャンバラとは大した度胸だ(3枚目の写真)。この後、机に飛び乗ったホアキンは、教室に吊ってある土星の模型にぶら下がり教壇に移動し、襲いかかる先生を跨ぎ越してお尻に強烈な一発。教室中の「ホアキン、ホアキン」という大声援に応えて、棒をかざして挨拶(4枚目の写真)。「ただでは済まさんぞ」と走り寄る先生を尻目に窓から飛び出る。なお、青字はスペイン語。
  
  
  
  
  

そこは2階だったが、目の前にある旗竿を滑り降りて、無事着地。窓から見ているみんなに手を振り(1枚目の写真)、窓から顔を出した教師に投げキスをし、見物人に腕を広げて優雅に挨拶する。得意満面で振り向くと、そこには父が。如何にもマズいといった顔で「パパ?」と言うホアキン(2枚目の写真)。実に可愛い。その後で、父子が町を歩いている。「どういうつもりだ? キンテロ神父が放校にしなくて幸運だった。言い訳するな。なぜ喧嘩ばかりしてる?」。「分かってないね。時には、戦わなきゃ」。「そうか? 誰が言った?」。「彼さ」と言って、壁に描かれた「ゾロ 万歳」の落書きを指す。「いいか、ゾロがここにいたら、戦いだけが解決法ではないと言うぞ」。「なんで分かるの?」。「私を信じろ。ゾロのことは よく知ってる」。「知るはずない。戦ったこともないくせに。ママのことすら 戦わなかった」。「私は お前の父親だ。そんな口はきくな。お前と母さんのためなら、どんなことだってする。分かったか?」。ホアキンのシラケタ顔が面白い(3枚目の写真)。その直後、父が親切にしてやっている貧しい農民が声をかけてくる。しばらく話していると、そこにマックギヴンスが再登場。最初の場面で、ゾロと闘った時、顔面を蹴られたので、木製の総入れ歯になっている。そのマックギヴンスが、農民に「500ドルやる。その代り、神の思し召しに従い、貴様のボロ小屋の証書をよこせ」と凄む。売らないという農民。そこで、父が口を出す。「売らないと 言ってますぞ」。「どこかで会ったね、旦那?」。「木の入れ歯男など 覚えとらん」。「白人みたいな服を着たメキシコ野郎なら 覚えてるぜ」。さらに、ホアキンに向かって「お前のパパさんは おんどりかな? それともめんどりかな?」と訊く。「息子に構うな…」と言いかけたところで、父は顔面を殴られ、「紳士として、息子には教えておかねば。右の頬を…」と言いかけて、「左の頬もか?」とまた殴られる。警察が現れ事は収まったが、収まらないのはホアキン。抵抗も反撃もしない父の手を振り払い、軽蔑の目を向ける(4枚目の写真)。
  
  
  
  

映画では、フランスのアルマン伯爵が自分の城館で盛大なパーティを開き、そこで、ゾロの元妻を将来の奥方候補として紹介する場面や〔母がアルマン伯爵に取り入るのは、ピンカートンの指令〕、先ほどの農夫の一家が、マックギヴンスの一団に襲われる場面がある〔マックギヴンスは伯爵の手下〕。父が、ゾロとして、農民を助けに行ったため、ホアキンは、学校の帰宅時、待ちぼうけを食わされる。つのる父への不信感。その翌日、生徒たちは屋外授業で荒地の井戸の所にいた。そこに現れたのがマックギヴンスの一団。井戸の水を飲みながら「ひでぇ暑さだな」と生徒たちに声をかける。先生が近付いて行くと、挨拶代りに口に含んだ水を吐きかける。先生:「何かご用ですかな、セニョール」。「授業の邪魔はしねぇよ、神父さん。俺も、神の仕事中だからな」。そう、言い捨てると、部下を馬に乗せ、どこかへ向かう。そんなチャンスを無にするホアキンではない。荷馬車の底に張り付くように隠れて一緒について行く。目的地に着くと同時に、馬車から抜け出し(1枚目の写真)、一目散に潅木の茂みに隠れる。そこには深い切り通しがあり、その切り通しの下の道は海に通じていて、船から荷揚げした何かをこの真下まで運んできて、そこから起重機で垂直に吊り上げ(2枚目の写真)、崖の上の荷馬車に載せてどこかに運ぶという算段だ。一団が去り、崖の上は2人の操作員だけになる。しかし、うっかりホアキンが足を滑らせてしまい、気付いた時には羽交い絞めにされていた(3枚目の写真)。起重機の横に投げ出され、「ここで、何やってる?」と詰問され、「サイテーのブ男を2人見てる」と憎まれ口をぶつける(4枚目の写真)。そして、さっき投げ出された時に壊れた箱から出てきた四角い物を、手当たり次第に投げつける。隙を見て1つ頂戴し、前に出て行って男の脚を思い切り蹴る。大活躍だが、うっかりロープに足を突っ込み、そのまま崖から落ちそうになる。そこにやってきたのがゾロ。ロープを切って崖からの転落を防いでくれ、逆に、男2人を荷物と一緒に崖下に落とす。
  
  
  
  

ゾロに救われたホアキンは、一緒に馬に乗せられて町に向かう。途中、湖畔で降ろされ、「信じられないや。本物のゾロだ」「これトルナード、でしょ?」「わぁ、こんなに大きいんだ」と馬にも大感激。上腕の傷を調べるゾロに、「かすり傷だよ」「何か言いたいことある?」。ゾロは、「スペイン語で話せ。父親の言葉だろ」。「母様も信じないよ」。「いかん。このことは、母親に話さん方がいい」。「どうして?」。「質問は私がする。なぜ 学校にいない?」。「顔に焼印のある男。何かたくらんでる。やっつけないと、あんなクソ野郎」(1枚目の写真)。「言葉遣いに気をつけろ。あの者達は人殺しだ。あの木枠の中味は、非常に危険なものだった。君を助けるため、中味を確認できなかったがな」。ホアキンは、さっき頂戴したサンプルを、自慢げに「このこと?」と差し出す(2枚目の写真)。それを見て、「石鹸か?」と驚くゾロ。「全部これだった?」。「山みたいに」。「本当か?」。「あなたをだます?」。「スペイン語だ。それに、これはゲームじゃない。君がしたことを知ったら、父親は心臓発作を起こすぞ」。「まさか。気にも留めないさ。昨日も、僕のこと忘れてた」(3枚目の写真)。板ばさみとなったゾロも苦しそうだ。「忘れてたとは思わない。君が理解すべきことは…」と言いかけて、「いや、父親は、ちゃんと来るべきだった。次は、そうするだろう」と反省の色も。「どうして分かるの?」。「分かるんだ。約束する」。この部分だけ、会話のほとんどはスペイン語だ。もともと、アドリアンは、この映画の主演が決まるまで英語は全く話せなかった。だから、スペイン語の話せるゾロ役のアントニオ・バンデラスはいいとして、スペイン語の話せない母役のキャサリン・ゼタ=ジョーンズとは最初の頃、大変だったとか。
  
  
  

恐らくその日の夕方、アルマン伯爵が母を館まで馬車で送ってくる。そして別れ際に何度も熱いキスを交わす。それを2階のバルコニーから見ていたホアキンの顔は悲壮だ(1枚目の写真)。一方、父は、町を歩いていて、ピンカートンの探偵に、強力な睡眠薬を指輪に仕込んだ針で一撃され、乗った馬車内で昏睡状態に。そのまま牢獄に監禁される。因みに、2人いる探偵の1人は、アメリカの超人気TVドラマ『LOST』で、謎めいたベンジャミン・ライナスを演じて高い評価を得たマイケル・エマーソンだ。一方、家では、フリル付きのシャツを着たホアキンが勉強のフリをしている(2枚目の写真)。背後から、母が、「すぐに戻るわ」と語りかけ、伯爵の家へと向かう。母の秘密任務も終盤に近付いている。ホアキンは、母がいなくなると、すぐに窓から木を伝って脱出する。父を捜すためだ。
  
  

どうせ父は飲んだくれているだろう、と酒場まで見に来たホアキン。店員に文字通り放り出されて、悪態をついている。フリル付きのシャツを着た〔つまり、上流の〕少年を扱うには手荒過ぎるような気もするが、「地獄に行ちっちまえ」という悪態も下品だ。その声を聞いて父は耳を疑うが、姿を見て納得し、「ホアキン」と声をかける。「おい、ここだ」。「パパ?」。「酒場なんかで 何してる?」。「牢屋で 何してるの?」(1枚目の写真)。「先に答えろ」。「ずっと パパを捜してた。ママのことで」(2枚目の写真)。「どうかしたのか?」。「しない。それとも、したかのな…」「男が 家に来たんだ」(3枚目の写真)「結婚を申し込んで、ママは『はい』って答えた」「まだ愛してるよね。ママに何か言わないと」「牢屋なんかにいないで! 何でいるのさ?! 止めてよ」。「ホアキン、聞くんだ」「ここから出るのを助けてくれ。そしたら、母さんを取り戻す」「もう一度 家族になる。約束だ」。この場面、同じ角度の3枚だが、表情が全部違う。一番気に入ってるのは2枚目。表情が多様な子役は、演技が上手な証拠でもある。
  
  
  

牢屋からの脱出シーンもコミカルだ。酒場の店員兼牢番の4人が食事を始めようとしている時、給仕担当のお尻をパチンコで一撃。ホアキンの顔が面白い(1枚目の写真)。これは、すごく痛くて、4人で喧嘩になる。その時、もう一発。今度は、顔を見られてしまう。その時の顔が傑作(2枚目の写真)。フリルはもうくしゃくしゃだ。追って来るのを見越して、通路に丸くなるホアキン。それにつまずいた男は、頭を壁に激突させて気絶、ホアキンは楽々と鍵を手に入れる(3枚目の写真)。「ホアキン、お前は天才だ」と父に褒められるが、すぐに、「だが、パパの許可なく、牢破りに係わるんじゃないぞ」と釘をさされる。
  
  
  

鍵を開けていざ脱出。しかし、出口にはまだ男が3人いる。最初は、父が、ホアキンを捕まえて、「下がれ! さもないと、子供の首を折るぞ!」と脅し、ホアキンも「助けて! 死ぬには早いよ! 長生きがしたい!」と言ってはみるが、そんな手は通用しない。そこから始まる鮮やかな父の戦いぶり。ホアキンは「そんなこと、どこで覚えたの?」と惚れ惚れする(1枚目の写真)。「牢屋は男を変えるんだ。行くぞ」。2人は牢から逃げ出し、フェリペ神父のいる僧院に辿り着く。そこで、父は、「ホアキン、私は一人で行かないと」と言い出す。「どうして? 牢屋から 助けてあげたのに! けんかになったら どうするの?」(2枚目の写真)。まだ信用がないのだ。「けんかはしない。説得する」。「説得なんか できないよ」。「世の中は、お前が思っているより複雑なんだ」。「違うよ、善と悪しかない」。「お前と議論してる暇はない」(3枚目の写真)。こうきっぱりと言い切ると、神父にホアキンを預け、伯爵の城館に向かう。そこでは、伯爵がヨーロッパから招いた秘密結社の幹部が、南軍の将軍を交えて密談していた。アメリカを大西洋から太平洋までつながった1つの大国にしないための陰謀だ。ここで、ニトログリセリンの威力が紹介され、それを南軍に引き渡すと伯爵が説明する。ゾロは、ニトログリセリンを積んだ汽車を爆破しようとするが、そこに正体のバレた妻と、僧院にいたホアキンが捕まって連れて来られたので、爆破を間一髪で止めるが、伯爵一味に捕らえられてしまう。
  
  
  

ここからは、冒険活劇の世界。伯爵はマックギヴンスに、ゾロのマスクを取れと命じる(1枚目の写真)。初めて暴露されたゾロの素顔。一番驚いたのはホアキンだ(2枚目の写真)。崇めていた偶像が、馬鹿にしていた父だったのだから。その場でゾロを殺すよう命じる伯爵。しかし、妻は、「やめて、アルマン! お願い。ホアキンの前では やめて」と懇願する。ホアキンも「パパ!」と暴れる(3枚目の写真)。伯爵は、情けを見せ、「我々が行ったら、すぐ殺れ」とマックギヴンスに命じて、母子を連れて汽車に乗り込んだ。マックギヴンスの愚かな点は、伯爵が去った後、すぐにその場でゾロを殺さなかったこと。隣接したニトログリセリン製造工場に連れて行き、「狼の群れの中に羊一匹」と言って仲間に任せたのだ。正しく言えば、「子犬の群れの中に虎一匹」の状態なので、あっという間に部下はなぎ倒され、マックギヴンスは機械に挟まれ、額の上にニトログリセリンが1滴落ちてきて(4枚目の写真)、粉々になる。
  
  
  
  

ゾロは、愛馬トルナードで汽車の追跡を開始する。汽車は、大量のニトログリセリンを積んでいるので、ゆっくりとしか進めない。汽車の前方に付けれた客車の中では、伯爵と、ゾロの母子が対立している。「私を永遠に塔に閉じ込めることはできる。でも、私の憎しみは消せないわ」。「ホアキンが貴族の暮らしを楽しんでるのを見たら、気が変わるだろう」。自分の名前が引き合いに出されたホアキンは、「パパが早く あんたの尻を…」と言い始め(1枚目の写真)、「ホアキン」と、母に制止される(下品な言葉を言うのをやめさせるため)。その時、客車の外から馬のいななきが聞こえる。不審に思った伯爵が窓の覆いを上げると、ゾロの鉄拳が窓ガラスを突き破り、伯爵を吹っ飛ばした。窓から身を乗り出し、「ゾロ!」と叫ぶホアキン(2枚目の写真)。ホアキンは伯爵の護衛に引きずり込まれる。坊主頭の怪力男だ。ホアキンは、怖そうに男を見上げる(3枚目の写真)。その後、ゾロは、汽車を停めようと、先頭の機関車に近づいて行く。しかし、機関手2人の抵抗に遭い、やっつけたのはいいが、機関手が動力装置にぶつかって汽車が加速してしまう。
  
  
  

ゾロが追いつけないまま、汽車は長い切り通し区間に突入する。平行しては走れないので、ゾロは切り通しの上を併走する。しかし、切り通し区間が終わると、その先の平原との間には崖が(1枚目の写真の左端)。ゾロは崖の端まで速度を落とさずに馬を駆ると、端から客車の屋根に向かってジャンプした。屋根の上のゴロツキを蹴散らして飛び移ったゾロとトルナード(2枚目の写真)。しかし、その先には、さらなる危機が。行く手にトンネルが見えてきたのだ。トンネルの存在を知った時、愛馬トルナードの目が大きく見開かれる。笑ってしまう瞬間だ。ゾロと馬は後方に向かって走るが、トンネルはどんどん迫る(3枚目の写真)。幸いその先の車両は、天井が木の板の家畜用の車両だった。トンネルに突入する直前、板を踏み割って貨車の中に落ち込むゾロとトルナード。ゾロは、馬をそこに残して、屋根に飛び上がると(トンネルを出た後)、そのまま伯爵のいる車両目指して走った。
  
  
  

伯爵が、ホアキンを人質にしようと首ねっこをつかんだ瞬間、天井の明り取りガラスを破ってゾロが伯爵の背後に降り立つ。一方、ホアキンは怪力男の足を蹴飛ばし、母が手刀を一発決めて、母子で後方車両に逃げる。伯爵は、男に2人を追わせ、自分は、ゾロと一対一で戦う。2人の激しい剣戟が続く(1枚目の写真)。見せ場の一つだ。一方、トルナードのいる貨車の手前まで辿り着いた母子。母が、「ホアキン、このまま行って」「貨車が止まったら、外に出て線路に沿って戻るのよ」と言い、連結器の上を歩かせて貨車に行かせ、連結器を解く。残った母は、追って来た男と、ニトログリセリンの車両で激しい戦いをくり広げる。ホアキンの乗った貨車は停止し、ホアキンはトルナードに乗って貨車から飛び降りると(2枚目の写真)、全力で汽車を追いかける。ゾロと伯爵の戦いは、ゾロが優勢となり、伯爵は機関車に向かって逃げる。母と男の戦いでは、男が刃を振り回した際、車両の横の扉を開けてしまう。母は、正面から襲ってきた男に、ニトログリセリン入りのシャンペン・ボトルをかざして躊躇させると、隙を見て、ボトルを男のズボンにはさみ、開いた扉から蹴落す(3枚目の写真)。そこには丁度、南軍の将軍がいて、男ともどもニトログリセリンで木っ端微塵になった。
  
  
  

一方、線路上に停めた特別車両で、独立州制定の調印式が行われている。普通なら最大の町の中心で行われるべきだろうが、映画のクライマックスを演出するため、敢えて線路上で行うという設定にしたのであろう。その会場を見おろす丘の上にホアキンが現れる。そして、下に集まる群衆(1枚目の写真)と、そこに向かって突進してくる汽車の両方を見て、式典を救うべく丘を駆け下りる。しかし、ここで新たな疑問が浮かぶ。ゾロですら追いすがるのがやっとだった汽車に、後方から追いかけてどうやって先行できたのか? これも、面白ければそれでいいと無視して、次へ移ろう。調印式用に停めた車両では、署名しようとしてインク瓶が揺れ始め、そこで汽車が猛スピードで接近して来ることに気付く。散り散りに逃げ出す群衆。そこにホアキンが到着し、分岐器の操作室に駆け込んで大きなハンマーを取り上げると(2枚目の写真/窓には突進してくる汽車が見えている)、手動式の分岐器をハンマーで叩いて動かそうとする(3枚目の写真)。特別車両の停まっている場所は、ちょうど廃線との分岐点の向こう側で、突進してくる汽車を廃線の方に入れることができれば、衝突を避けられるからだ。それに気付いたのがホアキンだけだったとは?! しかし、小さな子供の力では、てこの原理で動く原始的な装置を動かす事ができず、逆にハンマーが折れてしまう。
  
  
  

幸い、頭のいいトルナードが2本脚で立ち上がって、前脚でてこを動かし、分岐器が作動する(1枚目の写真)。ぎりぎり間に合って汽車は側線へと入って行く(2枚目の写真)。暴走する機関車の上では、今や、ゾロ夫妻と伯爵の三つどもえの戦い。線路の終点が近付く中、ゾロは伯爵を機関車先端の排障器に縛り付けると、線路上に出ていた給水タンクのアームにムチをひっかけ夫婦で脱出に成功する(3枚目の写真)。汽車は伯爵を縛り付けたまま車止めに激突、衝撃で最後の車両に積んであった大量のニトログリセリンが爆発した(4枚目の写真)。
  
  
  
  

かくして、調印式は無事終了。喜びに湧く群衆(1枚目の写真)。多くの群集の中で、母とホアキンだけは誇らしげにゾロを見ている。ホアキン目がけてゾロが帽子を投げ、その帽子を母に被せてもらって大得意のホアキン(2枚目の写真)。
  
  

場所はゾロの館。父子で再婚式の服装の準備に余念がない。父に、「女殺しだな」と言われても浮かぬ顔をしている(1枚目の写真)。そして、「なぜ、僕に話してくれなかったの?」と訊く。父は椅子に座らせ、「ホアキン、お前が生まれた時、私は命をかけてお前を守ると誓った。真実を隠せば、お前を守れると思ったんだ。しかし、母さんが正しかった。これは私だけの秘密ではなく、家族みんなのものだった。だから、二度と嘘はつかないと 約束する」。正直に打ち明けられ、ホアキンは父に抱きつく(2枚目の写真)。
  
  

フェリペ神父が再婚の式を執り行う。長々と式を続ける神父に、「少し急げませんか? 人々が呼んでいる」と、父でなく、母が催促する。そして交わされる情熱的なキス。父は、ホアキンの頬に触れて出て行くと、ゾロの衣装をまといトルナードに乗って走り去る。館から見える丘の上で、妻子のために夕日を背景に馬を二本脚立ちさせるゾロ。かっこいい(1本目の写真)。その英姿を見る2人も幸せそうだ(2枚目の写真)。
  
  

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